香川県高松市にオープンしたアーティストランスペース、Zunzun-planC (ズンズンプランシー)にて2月1日から2週間の公開制作を行います。昨今の閉塞した状況と、制作プロセスに他者と対話する姿勢を取り込んでいきたいという私自身の強い希望により、今回「聞き描き」と称した新しい取り組みを実践していきたいと思います(事前のPCR検査、人数制限を行ったオープンスタジオや消毒など、万全の工夫をして臨む予定です)。
また、準備期間のプレ聞き描き実験の様子も含めた実践記録をnoteにて公開中です!詳細は以下Zunzun-PlanCのサイトをご覧ください。

//////////////////////////////////////////////

展覧会情報
 Artist in residence  三輪恭子 「耳をすませて描く」
 期間|2021年 2月1日 [月] – 14日 [日]   ※要予約
 時間|9:30 – 18:00
 料金|入場無料
 会場|Zunzun-planC

〒760-0056
香川県高松市中新町2-12平井ビル301
https://zunzunplanc.themedia.jp/

▼関連イベント
2月14日 [日] 19:00 - アーティストトーク ※要予約
ゲスト:石田智子(高松市美術館学芸員)

//////////////////////////////////////////////

ご挨拶
Zunzun-planCでは初めてのアーティストインレジデンスプログラムとして、神奈川県在住の現代美術家・三輪恭子を招聘し、二週間の公開制作を行います。

三輪の作品群は、作家の視点を借りて作家自身や周辺に存在する人々のパーソナルな部分をこっそり覗き込むような感覚を与えるものが多く、共通して垣間見えるのは『各々が各々の心を持って生きている絶対的な証』の集積です。三輪は、誰しもが簡単に情報を発信でき、より多くの注目を集めようと躍起になる現代で、人々からの注目を望んではいない、ともすれば注目などという煩雑な概念からは逃れたいと思っているようにも見える、個々の記憶の中にしか存在しない繊細な感覚に敬意を払い、インスタレーションやドローイング等を通して表現してきました。

三輪は3年前にも高松市を訪れており、独立した小さい山々や、地平線のない島々の浮かぶ海を代表する風景、独特なお菓子の形に神々しさすら感じたと語っています。それらを当たり前に捉えながら幼少期を過ごし、大人になってからその風景の中に帰ってきたZunzun-planC主催の土居大記と矢野恵利子を中心に、今までのような作家視点ではなく、高松の人々の視点に立って新たな手法での表現を試みるのが今回のプログラムにおける三輪の大きな目的です。積極的に発信するほどでもない、しかし確実に彼/彼女らの現在をつくってきた記憶を、当事者の目線で紐解き三輪の手でアウトプットすることで、三輪自身にとっての「記憶」の捉え方がブラッシュアップされることを期待しています。

Zunzun-planCにとっても実験的取り組みとなり、どのような過程を経てどのような成果が生まれるのかを楽しみにしています。皆様も、日々変わりゆくであろう三輪の思考錯誤のプロセスを是非お楽しみください。

Zunzun-planC 矢野恵利子

//////////////////////////////////////////////

作家より
私は近年、自分の日常生活の中で体験してきた人や風景、会話などの記憶をたどりながら、そこからイメージされることを言葉以前の感覚として自分の身体を通じて表現したいと思い、ドローイングを描いてきました。そこでは記憶を再現したり、正確な情報を残すことを目指すのではなく、描く対象の力を借りてその周辺がまとう空気感や、自分だけの微妙な肌感覚など、私にとってのリアリティを表現していきたいと思ってきました。

ただそのように描き続けるうちに、自分の記憶を反芻して描くだけの行為では、自分のストーリーや因果律のようなものから抜け出せないのではという疑問や息苦しさを感じ始めました。

そこで、「自分以外の人」から個人的な話を聞き出し、その内容をドローイング他さまざまな手法で描き直す「聞き描き」を始めることにします。今回はZUNZUN-planCのメンバーお二人に地元の香川に関する個人的な記憶を語ってもらい、滞在期間中にそれらを私がさまざまな手法で描き直します。話し手は記憶を語ることで自分の生を生き直し、描き手は自分の表現や思考の枠を飛び越え、互いに自分の記憶のスタイルを見直すことで生きた対話と発見があることを期待しています。